現代バスケットボールの進化は目覚ましく、プレイヤーに求められるスキルセットも劇的に変化しています。
特に、ジェームズ・ハーデンやルカ・ドンチッチといったNBAのスーパースターたちが多用する「ステップバック」や「ユーロステップ」といった横方向への激しいムーブは、今やアマチュアレベルでも必須のスキルとなりました。
そんな現代のプレースタイルに呼応するように、ASICS(アシックス)が世に送り出したのが「UNPRE ARS(アンプレアルス)」シリーズです。
今回レビューするのは、その最新作である「UNPRE ARS LOW 3(アンプレアルス ロー 3)」。
前作から定評のあった「サイドウォール構造」をさらに進化させ、もはやバッシュという枠を超えた「対衝撃ギア」とも呼べるルックスに変貌を遂げました。
発売前には「河村勇輝選手のシグネチャーモデルではないか?」という噂も飛び交いましたが、蓋を開けてみれば、特定のスタープレイヤーのためだけではなく、「横方向への安定性」を渇望するすべてのパワープレイヤーのために設計された一足でした。
しかし、このシューズは万人に勧められる「優等生」ではありません。
- 「重すぎるのではないか?」
- 「クッションが硬いという噂は本当か?」
- 「グリップは埃に弱いのか?」
SNSや口コミで囁かれるこれらの懸念点は、果たして真実なのでしょうか。
この記事では、数多のバッシュを履き比べてきた筆者が、UNPRE ARS LOW 3を徹底的に解剖します。
スペック上の数値だけでなく、実際のコート上の挙動、素材の質感、そして長時間のプレーで感じる疲労感に至るまで、忖度なしの情報を詳細にお届けします。
もしあなたが、強靭な足腰を持ち、ディフェンスで相手をシャットアウトしたいと願うなら、このレビューはあなたのためのものです。
逆に、軽快なステップでコートを駆け回るスピードスターなら、この記事を読むことで「買ってはいけない理由」が明確になるでしょう。
- ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」の概要
- ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」の性能
- ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」のサイズ感
- ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」を実際に使用した私の体験談・レビュー
- ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」に関するQ&A
- ガードポジションの選手におすすめですか?
- GLIDE NOVA FF(グライドノヴァ)と比べてどうですか?
- 同じアシックスの「NOVA SURGE LOW(ノヴァサージ ロー)」と迷っています。どう違いますか?
- インソールを変えればクッション性は改善しますか?
- 外履き(ストリートバスケ)でも使えますか?
- くるぶしやアキレス腱周りの当たりは痛くないですか?
- サイズ選びで迷ったら、大きい方と小さい方どちらがいいですか?
- ジャンプ力は上がりますか?
- センター(C)が履いても大丈夫ですか?
- 前作(UNPRE ARS LOW 2)から買い替える価値はありますか?
- 結局、このバッシュの一番の「売り」は何ですか?
- 膝や腰に痛みがあるのですが、クッション性は十分ですか?
- 中学生・高校生が履いても重すぎませんか?
- ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」のレビューのまとめ
ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」の概要

まずは、UNPRE ARS LOW 3の基本的なコンセプトとスペック、そして前作からの変更点について整理します。
UNPRE ARS LOW 3について
UNPRE ARSシリーズのアイデンティティは、「サイドステップ時の安定性」に集約されます。
バスケットボールにおいて、ディフェンスを抜く際や、ディフェンスがオフェンスのコースに入る際、足には強烈な横方向のG(重力加速度)がかかります。
一般的なシューズでは、この負荷に耐えきれずアッパーが変形したり、最悪の場合は足首が外側に倒れ込んで捻挫を引き起こしたりします。
UNPRE ARS LOW 3は、シューズの外側に巨大な樹脂パーツ(サイドウォール)を配置することで、物理的に「壁」を作り、足が外に流れるのを強制的に食い止める構造を持っています。
今作「3」では、このサイドウォールがミッドソール部分まで侵食するように大型化し、保護範囲が劇的に拡大しました。
デザイン:好みが分かれる「剛健さ」
箱を開けた瞬間、その異質なデザインに目を奪われます。
- サイドウォール: 大きく張り出したパーツが圧倒的な存在感を放つ。
- シルエット: ローカットでありながら、トレッキングシューズや安全靴のような「ゴツさ」がある。
- アッパー素材: メッシュと樹脂パーツが複雑に組み合わされ、機能美を追求した無骨な仕上がり。
流麗でスマートなデザインが主流の昨今のバッシュ市場において、このデザインは賛否両論あるでしょう。
「ガンダムの足のようだ」と揶揄されることもあれば、「機能が形になった究極の姿」と称賛されることもあります。
私の個人的な印象としては、スポーツシューズとしての軽快さよりも、「戦車」のような頼もしさを感じさせるデザインです。
重量:近年のトレンドに逆行する重さ
スペックを語る上で避けて通れないのが「重量」です。
| サイズ | 実測重量(約) | 参考: UNPRE ARS LOW 2 | 参考: GELHOOP V17 | 参考: NOVA SURGE LOW 2 |
|---|---|---|---|---|
| 29.0cm | 約480g | – | – | – |
| 28.5cm | – | 約440g | 約400g | 約450g |
※重量は個体差や湿度により若干変動します。
29.0cmで約405gという数値は、現代のローカットバッシュとしては「重量級」に分類されます。
アシックスの名作「NOVA SURGE(ノヴァサージ)」の初期モデルを彷彿とさせる重さであり、「軽さは正義」とされる近年のトレンドに真っ向から逆行しています。
この重さの原因は明確です。
- 巨大なサイドウォールパーツ
- 厚みのあるアウトソールラバー
- 堅牢なアッパー補強
これらはすべて「安定性」と「耐久性」を高めるための要素です。
つまり、この重さは「防御力とのトレードオフ」と捉えるべきでしょう。
その他:価格と基本スペック
- 商品名: UNPRE ARS LOW 3(アンプレアルス ロー 3)
- メーカー: ASICS(アシックス)
- 定価: 17,600円(税込)
- 製造国: ベトナム
- 展開サイズ: 24.0cm 〜 30.0cm, 31.0cm, 32.0cm
価格は17,600円と、ハイエンドモデルとしては標準的な設定です。
昨今の物価高騰や円安の影響を考慮すれば、これだけの部材を使い込んだシューズとしてはコストパフォーマンスは悪くありません。
ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」の性能

ここからは、グリップ、クッション、フィット感など、実際のプレーに直結する性能面を深掘りしていきます。
クッション性:軽量級には「硬すぎる」可能性
ミッドソールには、アシックスの代表的なクッション素材である「Flight Foam(フライトフォーム)」が採用されています。
軽量かつ反発性に優れた素材ですが、本モデルにおけるセッティングは非常に特徴的です。
【構造的な特徴】
- 厚めのミッドソール: 見た目にはボリュームがある。
- 厚いアウトソール: 接地面のラバーがかなり肉厚。
- サイドウォールの干渉: 横方向のパーツがソールの変形を抑制している。
【実際の感触】
結論から言うと、「かなり硬い」です。
特に体重が軽いプレイヤー(60kg台前半以下)の場合、踏み込んでもソールが沈み込まず、反発を得る前に動作が終わってしまう感覚に陥ります。
「GELBURST」や「NOVA SURGE」のような、踏み込んだ瞬間に「グッ」と沈んで「パンッ」と返ってくるようなわかりやすい反発性はありません。
むしろ、硬いボードの上に立っているような感覚に近く、衝撃吸収性は物理的な部材の厚みでカバーしている印象です。
一方で、体重が80kg、90kgを超えるようなパワープレイヤーにとっては、この硬さが逆に「安定感」に変わります。
柔らかすぎるクッションは重い体重を支えきれずに底付きしてしまいますが、UNPRE ARS LOW 3はどれだけ強く踏み込んでも潰れることがありません。
評価:
- 軽量級プレイヤー: ×(硬すぎて衝撃が来る、足が疲れる)
- 重量級プレイヤー: ◎(沈みすぎず、次の一歩が安定する)
グリップ性:強力だが埃には要注意
アウトソールパターンは、細かい溝が刻まれたフラットな形状です。
アシックスのNCラバーは伝統的にグリップ力に定評がありますが、このモデルには特有の「癖」があります。
【メリット:クリーンなコートでの絶対的な制動力】
清掃が行き届いた綺麗なフローリングコートでは、「キュッ」という音すらさせずに止まるほどの強力なグリップを発揮します。
接地面積が広いため、摩擦係数が高く、前後左右どの方向にも隙がありません。
【デメリット:埃(ダスト)への弱さ】
問題は、接地面積が広すぎる(ベタッとしている)点です。
NOVA SURGEのようにソールパターンが適度に肉抜きされていたり、XDRソールのように溝が深くて粗かったりする場合、埃があっても逃げ道があります。
しかし、UNPRE ARS LOW 3は平らな面で接地するため、埃を吸着しやすい傾向があります。
埃っぽい体育館で使用すると、数プレーで裏に埃が膜のように張り付き、急激にグリップ力が低下します。
対策:
このバッシュを使用する場合、こまめなソール拭き(雑巾やハンドクリーナーの使用)が必須となります。
メンテナンスを怠ると、せっかくの高性能グリップが発揮されません。
フィット性:足幅は狭めだが「痛み」は少ない
アッパーのフィット感については、アシックスの巧みな設計思想が見て取れます。
【シューレースシステムの工夫】
シューレース(靴紐)を通すストラップの配置が絶妙です。
紐を締め上げた際、圧力が真下にかかるのではなく、バイアス(斜め方向)に分散してかかるように設計されています。
これにより、バッシュをキツく縛るプレイヤーにありがちな「足の甲の血管が圧迫されて痛い・痺れる」という問題が解消されています。
シュータンも肉厚で幅広なため、足首周りを優しく、かつ強固にロックしてくれます。
【ラスト(足型)の注意点】
全体的な作りは「タイト」です。
特に前足部の横幅が狭く設計されています。アシックスのスタンダードラストの中でも、特に細身に感じる部類です。
中足部は逆に少し余裕を感じる作りになっており、「前はキツイのに真ん中は緩い」というアンバランスさを感じる人もいるかもしれません。
サポート性:鉄壁のサイドウォール
これこそが、このシューズを購入する最大の理由です。
- サイドウォールの効果:
ディフェンスで相手のドライブに反応して横に飛び出した際、通常のシューズならアッパーが外側に「グニャッ」と歪みます。
しかし、UNPRE ARS LOW 3は壁があるため、ミリ単位もズレません。
足の力が逃げることなく床に伝わるため、切り返しの速度が上がります。 - ヒールカウンターの剛性:
踵(かかと)周りの作りも非常に硬く、岩のように踵をロックします。
この「横ブレのなさ」は、捻挫の予防にも大きな効果を発揮します。
過去に足首を酷く捻った経験があり、サポーターをしていても不安があるというプレイヤーにとって、この物理的な壁は大きな安心材料となるでしょう。
その他:耐久性と作り込み
アッパーの縫製(ステッチ)を見てみると、負荷のかかる部分は二重に縫われていたり、異素材同士の接合部が補強されていたりと、非常に丁寧に作り込まれています。
軽量化のために圧着(シームレス)のみで済ませるシューズが多い中、あえてステッチワークを多用している点は、耐久性への自信の表れです。
毎日激しい練習を行う部活生が履き潰そうとしても、ソールが磨り減るより先にアッパーが破れることはまずないでしょう。
それほど頑丈です。
ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」のサイズ感

ネット通販で購入を検討している方にとって、最も重要なのがサイズ選びです。
UNPRE ARS LOW 3はサイズ選びの難易度が非常に高いモデルです。
サイズ感の詳細
私は普段NIKEで29cm、ASICSで28/5cmを選択することが多いですが、UNPRE ARS LOW 3は29cmでフィットしました。
ちなみに、ASICSのシューズでハーフサイズ上げたのは初めてです。
| 項目 | 特徴 | 評価 |
| 縦の長さ | 標準的 | いつものアシックスサイズで長期的にはOK。 |
| 横幅(ワイズ) | 狭い | 小指の付け根あたりが窮屈に感じる可能性大。 |
| 甲の高さ | 標準〜やや高め | シューレースでの調整幅が広いので問題なし。 |
| 踵の収まり | 良好 | ヒールカップが深めで抜けにくい。 |
典型的な「縦は普通、横は狭い」という欧米モデルに近いフィット感を持っています。
ユーザーレビューに基づくサイズ選びのシミュレーション
ここでは、私の実体験と、一般的な足型のパターンに基づいた推奨サイズを紹介します。
【ケースA:足幅が標準〜細めの人】
- 推奨:いつものASICSサイズ or +0.5cm(ハーフサイズアップ)
- 最初は少しタイトに感じるかもしれませんが、履き込むうちにインソールやパディングが馴染みます。
縦の長さを優先してジャストサイズを選びましょう。
足幅が標準の方は場合によってはハーフサイズ上げた方がいい場合もあります。
【ケースB:足幅が広め(3E以上)の人】
- 推奨:+0.5cm(ハーフサイズアップ) + 厚手のソックス
- 横幅に合わせてマイサイズを選ぶと、小指が痛くてプレーに集中できないリスクがあります。
ハーフサイズ上げて横幅を確保し、縦の余りは厚手のバスケットソックスや、滑りにくい高機能インソールで調整するのがベターです。
【ケースC:甲高の人】
- 推奨:甲は気にせず幅と長さで選んでOK
- シューレースシステムが優秀なので、甲の高さは紐の調整で十分対応可能です。
結論:
「試着なしでの購入は博打に近い」です。
可能であれば実店舗に足を運び、必ず「試合用ソックス」を履いた状態で足入れを行ってください。
ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」を実際に使用した私の体験談・レビュー

ここからは、身長180cm、体重約88kgの筆者が実際にUNPRE ARS LOW 3(29.0cm)を着用し、数週間にわたってプレーしたリアルな体験談をお伝えします。
一般的に「重くて硬い」と敬遠されがちな本モデルですが、私のようなヘビーウェイトのプレイヤーが履くと、その評価は劇的に変化しました。
なぜなら、このスペックは「我々の体重を支え切るために計算された硬さ」だったからです。
第一印象:私の体重でも「壊れない」という確信
箱から取り出した瞬間、その質量と剛性に驚くと同時に、安堵感を覚えました。
軽量化を追求したペラペラのバッシュでは、私の体重で激しいカッティングを行うと、アッパーが悲鳴を上げ、ソールがねじれてしまうことが多々あります。
しかし、この戦車のようなサイドウォールと厚みのあるソールを見た瞬間、「これなら全力で踏み込んでも絶対に負けない」という、道具に対する信頼を感じました。
足を入れた瞬間の感触とシューレース
足入れ当初は、前評判通り前足部の横幅に強いタイトさを感じました。
私の足幅も相まって最初は窮屈でしたが、シューレースシステムが優秀なため救われました。
ストラップ構造が甲の高い位置から面で押さえてくれるため、強く締め上げても局所的な痛みが出ません。
数回の練習でインソールが沈み、アッパーが足の形に馴染んでくると、その窮屈さは「遊びの一切ない、万力のようなホールド感」へと変わりました。
中で足が遊ばないことは、重量級にとって怪我防止の生命線です。
重量バランスと「アンカー効果」
実測約480gという重量は、履いて動いても明確に「重い」です。
これは否定しません。
しかし、88kgの体を動かす私にとって、この重さは決してデメリットだけではありませんでした。
重心が低く(ボトムヘビー)、ソール側に重量があるため、ポストプレーでの押し合いや、スクリーンをセットした時の「地面への食いつき」が段違いです。
軽いバッシュだと当たり負けして浮いてしまう場面でも、このシューズはアンカー(錨)のように私をコートに繋ぎ止めてくれました。
軽快さは犠牲になりますが、フィジカル勝負での安定感は抜群です。
グリップの持続性と埃の問題
グリップ力に関しては、体重がある分だけ摩擦係数が高まり、クリーンなコートでは恐ろしいほど止まります。
88kgの質量がトップスピードから急停止しても、ソールが微動だにせず受け止めてくれる感覚は圧巻です。
ただし、埃への弱さは重量級にとっても深刻でした。
接地面積が広くベタッとしているため、埃を吸着しやすく、一度滑り始めると私の体重では止まりきれずに大きく体勢を崩してしまいます。
最高のパフォーマンス(強力なストッピングパワー)を維持するためには、プレイの合間に必ずソールを拭くルーティンが不可欠でした。
重量級プレイヤーが感じるクッション性
ここが最もお伝えしたいポイントです。
軽量級の方には「硬すぎる」と評されるFlight Foamのミッドソールですが、私の体重で踏み込むと「沈み込みすぎない、絶妙な反発」に変わります。
柔らかすぎるクッション(低反発系)だと、私の体重では着地時にソールが潰れきってしまい(底付き)、逆に衝撃が膝に抜けてしまいます。
しかし、この硬質なソールは高荷重をかけてもしっかりと形状を維持し、潰れることなくエネルギーを地面に伝えてくれます。
「硬い」のではなく、「重い負荷に耐えうるサスペンション」として機能していると実感しました。
体験談の総括
結論として、このシューズは「体重とパワーがある選手が履いて初めて完成する」と感じました。
私の88kgという体重とパワーを受け止め、横ブレを完全に殺し、入力したエネルギーを逃さずコートに伝える。
軽量級選手にとっては「オーバースペックな重り」かもしれませんが、私にとっては「フルパワーで暴れることを許してくれる唯一の鎧」です。
ようやく、靴の破損や捻挫を恐れずにプレーできる相棒に出会えました。
ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」に関するQ&A

読者の皆様から想定される疑問に対して、一問一答形式で回答します。
ガードポジションの選手におすすめですか?
スピード重視のガードにはおすすめしません。
クリス・ポールのような、ピック&ロールを多用し、ストップ&ゴーを繰り返すコントロールタワー型のガードや、フィジカルで押し込むガードなら選択肢に入ります。しかし、カイリー・アービングのように軽やかなハンドリングとステップで撹乱するタイプには、この重さと硬さが邪魔になるでしょう。
GLIDE NOVA FF(グライドノヴァ)と比べてどうですか?
コンセプトが正反対です。
- GLIDE NOVA FF: 裸足感覚、軽量、足首の可動域重視。
- UNPRE ARS LOW 3: 鎧のような保護、重量、安定性重視。
もしあなたがGLIDE NOVA FFを気に入っているなら、UNPRE ARS LOW 3は全く合わない可能性が高いです。
同じアシックスの「NOVA SURGE LOW(ノヴァサージ ロー)」と迷っています。どう違いますか?
「バネ」か「壁」かの違いです。
NOVA SURGE LOWは、クッションに厚みがあり、踏み込むとポンと跳ね返る「バネのような反発」が特徴で、ジャンプ動作をアシストします。 一方、UNPRE ARS LOW 3は、横方向への力を逃さない「壁のような剛性」が特徴です。
インソールを変えればクッション性は改善しますか?
多少は改善しますが、根本的な硬さは変わりません。
純正インソールも悪くありませんが、より衝撃吸収性の高いインソール(例:ZAMST Footcraftなど)に変えることで、足裏の当たりは柔らかくなります。しかし、ミッドソール自体の硬さとアウトソールの厚みは変わらないため、劇的な変化は期待しない方が良いでしょう。
外履き(ストリートバスケ)でも使えますか?
向いています。
アウトソールのラバーが厚く、アッパーの耐久性も高いため、コンクリートコートでの使用にも耐えうるスペックです。ただし、前述の通り埃(砂)を拾いやすいので、グリップ面での注意は必要です。
くるぶしやアキレス腱周りの当たりは痛くないですか?
痛みが出る可能性は低いです。
見た目はゴツゴツしていますが、足首周りのライニング(内張り)は厚みがあり、非常にソフトです。また、ローカットですがヒールカウンターの形状が踵をしっかり掴む設計になっているため、靴擦れも起きにくい構造です。ただし、くるぶしの位置が極端に低い方は、サイドウォールの上端が干渉しないか試着で確認することをお勧めします。
サイズ選びで迷ったら、大きい方と小さい方どちらがいいですか?
このモデルに関しては「大きい方」を選び、ソックスやインソールで調整するのが無難です。
アッパーの剛性が非常に高く(硬く)、履き込んでも横に伸びにくい素材です。小さいサイズを選んでしまうと、馴染むのを待つ間に足が痛くなる可能性が高いです。少しゆとりを持たせ、厚手のバスケットソックスや滑り止めの効いたインソールで調整する方が失敗が少ないでしょう。
ジャンプ力は上がりますか?
「跳びやすくなる」というより、「着地してすぐに次へ動ける」シューズです。
クッションが硬めで反発がダイレクトに返ってくるため、脚力がある選手なら踏み切りは強く行えます。しかし、シューズ自体が重いため、高さ勝負よりも「連続ジャンプの安定性」や「着地後の切り返しの速さ」に恩恵を感じるでしょう。
センター(C)が履いても大丈夫ですか?
ローカットなので不安です。 A. センターにこそ履いてほしいローカットです。
「センター=ハイカット」という常識はこのシューズには当てはまりません。サイドウォールによる横ブレ防止機能と、分厚いソールの安定感は、ポストプレーでの押し合いやリバウンド争いで強烈な武器になります。足首の可動域を確保しつつ、防御力はハイカット並みにあるため、現代的な動けるビッグマンには最適です。
前作(UNPRE ARS LOW 2)から買い替える価値はありますか?
「より強い固定力」を求めるなら買い替え推奨です。
2も名作でしたが、3はサイドウォールの範囲が広がり、アッパーの剛性も増しています。「2でも少し横ブレを感じた」「もっとガチガチに固めたい」という場合は3への移行をお勧めします。逆に、2の「ある程度の柔軟性」が好きだった場合は、3を「硬すぎる・重すぎる」と感じるかもしれません。
結局、このバッシュの一番の「売り」は何ですか?
「フィジカル負けしない土台」を作れることです。
相手と接触してもバランスが崩れない、激しいディフェンスでも足が流れない。この「土台の強さ」こそが最大の売りです。派手な得点シーンよりも、泥臭いディフェンスやリバウンドでチームを支えるプレイヤーにこそ輝くシューズです。
膝や腰に痛みがあるのですが、クッション性は十分ですか?
体重が軽い場合は注意が必要です。
体重がある選手ならクッションが機能しますが、軽量級の選手だとソールが沈み込まず、衝撃がダイレクトに膝や腰に来る可能性があります。関節への負担を減らすために柔らかいクッションを求めているなら、あまりおすすめしません。逆に、「柔らかい靴だと着地がグラついて膝が痛む」というタイプの方には、この安定性がプラスに働きます。
中学生・高校生が履いても重すぎませんか?
「脚力が完成していない」成長期にはオーバースペックかもしれません。
体が出来上がっていない中学生などが、片足約480g(29cm)のこのシューズを履くと、足が振り回されてフォームが崩れたり、疲労骨折(シンスプリント等)のリスクになったりする可能性があります。ある程度筋肉がつき、フィジカルコンタクトが増えてくる高校生以上、あるいは体格の良い中学生プレイヤー向けと言えます。
ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」のレビューのまとめ

最後に、ASICS UNPRE ARS LOW 3の良い点・悪い点を整理し、どのようなプレイヤー買うべきかを総括します。
メリット
- 鉄壁のサイドサポート: 横ブレを物理的に遮断する最強のサイドウォール。
- 高耐久性: 長期間ハードに使っても壊れにくい堅牢な作り。
- 甲への優しさ: 強く締めても痛くなりにくい優秀なシューレース構造。
- 絶対的なグリップ力: クリーンな環境下ではトップクラスの制動力。
- 足首の保護: ローカットながら、捻挫への不安を軽減する安定性。
デメリット
- 重い: 約485gという重量は、フットワークの軽快さを削ぐ要因になる。
- 重心バランスが悪い: アウトソール側に重さが偏り、足が重く感じる。
- クッションが硬い: 軽量級プレイヤーには衝撃吸収性が不足する。
- メンテナンスが必要: 接地面積が広く、埃を拾うと滑りやすくなる。
- サイズ選びがシビア: 横幅が狭く、フィッティングが難しい。
おすすめできる人
以下の条件に2つ以上当てはまるなら、このバッシュはあなたのパフォーマンスを向上させる「最強の武器」になります。
- 体重が重い(またはフィジカルが強い)プレイヤー。
- 過去に足首を捻挫した経験があり、再発を恐れている人。
- オフェンスよりもディフェンスにプライドを持っている人。
- ユーロステップや激しいステップバックを武器にしている人。
- バッシュをすぐに履き潰してしまうため、耐久性を求めている人。
おすすめできない人
以下の条件に当てはまる場合、購入は慎重になるべきです。
- 体重が軽い(60kg以下など)スピードプレイヤー。
- 「素足感覚」や「地面を掴む感覚」を重視する人。
- 柔らかく、モチモチとしたクッションが好きな人。
- 清掃が行き届いていない埃っぽいコートでプレーすることが多い人。
総合評価
【評価:尖りすぎた名機】
客観的な点数をつけるなら「75点」かもしれません。
しかし、ハマる人にとっては「120点」、合わない人には「30点」となる、極めて人を選ぶシューズです。
ASICSは、万人受けする「GELHOOP」や「NOVA SURGE」というラインナップを持ちながら、あえてこのUNPRE ARS LOW 3で「安定性への狂気」とも言えるアプローチを見せました。
「軽さこそ正義」という時代の潮流に逆らい、重さを許容してでも得たかった「絶対的な安定感」。
もしあなたが、コート上で誰よりも激しく動き、誰よりも強く踏ん張りたいと願うなら、この重さは「足枷」ではなく、あなたを守る「鎧」となるはずです。
ASICS 「UNPRE ARS LOW 3」のレビューの総括
この記事を読んで「自分には合わないかも」と思った方は、素直にGLIDE NOVAやGELHOOPを検討してください。
しかし、「これこそ俺が求めていた機能だ!」と直感した方は、ぜひ一度店頭でその足を入れてみてください。
その瞬間、あなたの足元は要塞となり、コート上の景色が変わるかもしれません。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
あなたのバスケットボールライフが、最高の一足と共に充実したものになることを願っています。

